社長あいさつ

ないものは つくろう

仲間たちの想いを形に たどり着いた新しい福祉

「はぁーとパンのベーグルが大好き。どこに行ったら買えますか?」。

「カフェふろーとのランチ、コスパ抜群!週2で通っています!」。

お客さまのそんな温かいお声と、利用者やスタッフの想いに支えられ、私たち株式会社SHIBAは、平成21年設立以降成長させていただいております。

高校で介護福祉、福祉大学で社会福祉を勉強し、社会人1年生として地元の地域支援センターⅠ型で働いていた私。その頃、障害者自立支援法が施行され、福祉施設は障がい別(精神・知的・身体)の特性に合わせることなく、すべての特性を受け入れるようになっていました。

初めての職場で精神科に通う利用者さんが集う交流室をひとりで任され、ゼロから関係性を築いてきた私は、皆さんの様々な思いを知り、想いを受け止める中で、地域でこれからも安心して暮らしていでいける環境の大切さ、本当にやりたい仕事ができる場所や、「居場所」づくりの大切さを肌で感じていました。

しかし、当時の宮崎市の事業所も、ほとんどの事業所が対象者を特定しなくなるスタンスになり利用者の方から精神科に通院している人を理解してくれる事業所が増えると良いなと言う意見を耳にする事が多かったです。

経験を1年間積ませていただき利用者さんと関わる中で、1番近いソーシャルワーカーになっていました。その中で、皆が育ててくれた考え方や思いを大切にしてこの感性で辞めた方が良いのではないかと咄嗟に思い退職届を出してしまいました。

退職後は、精神保健福祉分野で働きたいと思い、地域の福祉関係の事業所を探しましたが、中々見つからず、ある日、母が言った「なければ、つくったらいいじゃない?」と言ってくれたこの言葉が、私たちの原点です。

当時は、実績のない会社は簡単に就労の事業所の申請が出来ず、多くの方の協力を得て社会適応訓練事の協力事業所の申請を行いました。1年半もの間、利用者さんたちと地道にパンを売り歩き、喫茶店を開いて収入を生み出して基盤を作り、ようやく就労継続支援A型の指定を受けることができました。

会社は宮崎市中心部の商店街にあります。大学時代に、これからは地域移行支援が大切になってくると学んだ私は、利用者さんが街中に、地域に溶け込みながら仕事をし、生活することが何より必要だと考えています。利用者さんとともに会社周辺の清掃から取り組み、今では地域の方々が一緒に作業したり、気軽に声をかけてくれたりする信頼関係を築くことができています。

「ないものは、自分たちで形にする」。その理念をもとに、現在、宮崎と、福岡で事業所を運営するまでに成長してきた私たちの会社。その道しるべになったのは、いつも利用者さんの想いや一言でした。

パン作りがしたいと相談に来た女の子。はじめは就職先として私たちの会社を考えていたわけではなかったようですが、ほかのパン作りやお菓子作りを作業として行う企業では、お皿を洗ったり、商品を袋に詰めたりといった作業しかできなかったそうです。

私たちの福祉事業所では、利用者さん自身が初めから終わりまで作業することを、何より大切に考えます。自分で生地を分割し、形を作り、焼き上げたパンをとても嬉しそうに眺めていたその女の子は、やがて私たちの仲間に。彼女の特性を生かした働く場所づくりを考えて、就労継続支援B型や、就労継続支援A型(ヴェールピア)の開所にもつながりました。

また私たちの会社は、障がい福祉事業所としては全国でも珍しく、行政運営の美術館の喫茶室を委託運営しています。宮崎県立美術館のある公園周辺は閑静で瀟洒なエリア。宮崎市民の憧れです。利用者さんの一人が、「社長、私たちもこんな場所で働けるようになったら嬉しいね」。こんなことをずっと口にしていました。

そんななか、思いもかけず、美術館のレストランが委託先を新たに募集することに。周囲からは「福祉事業所では難しい」と言われ続けましたが、私たちのカフェで提供する食事、パン、そして利用者さんやスタッフの働きぶりを見ていただき、委託を受けることができたのです。「想い続ければ、夢はかなうんだ」。きっと、利用者さんの強い想いが引き寄せてくれたチャンスなのでしょう。

このように、いつも、私たちの未来は、利用者さんやスタッフの熱意で切り開かれてきたのです。 仲間の夢や想いを一つひとつ実現しながら、私たちはこれからも、未来に向かってステップアップしていきます。


「ないものはつくろう」

2017年九州社会福祉研究 第41号
「ないものはつくろう」柴田裕介


学生時代から就職、起業、そして今は未来に込めた想いを綴った論文です。
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